虫歯のリスクその2
- 2025年10月29日
- 臨床系
前回の更新から半年以上が経過いたしました。季節の変わり目ですので皆さまご自愛ください。
前回のコラムでは虫歯のリスクの1つとして、修復物の適合性の重要性をお話させていただきましたが、今回は「食事」についてです。
虫歯になる原因は原因菌であるミュータンス菌がショ糖等を取り込み、代謝産物として酸を産生することで、歯が溶けていきます。
糖質の摂取→細菌が酸産生→プラーク(食べかす)pHの低下→脱灰(歯が溶けること)の発生という流れです。
頻回な糖質の摂取は食べかす内のpHを何時間も臨界pH以下にします。(臨界pH:歯が溶け始めるpH)
ですからブラッシングで食べかすを除去することが重要なのですが、毎回すべて除去できるわけではありません。つまり残っていると考え、臨界pH以上になるまで時間をおいて次の食事をすれば歯に影響はそこまでありません。(唾液や歯磨き粉含有フッ素の再石灰化効果)

虫歯になりやすい方は日に何度も臨界pHを下回るような食事をされている方が多いです。
そこで虫歯のリスク把握のためにどのような食事をしているのか、記録をつけていただく場合があります(主に海外)。最低3日で、休日を含んでいただくことが条件です。これにより隠れた糖質の存在を確認できます。以下に例を示します。
食事・飲料記録(3日間)
| 時間帯 | 日付 | 時刻 | 摂取内容 | 砂糖の量・備考 |
|---|---|---|---|---|
| 朝食前 | 日曜日 | 7:30 | 紅茶(砂糖2杯) | 砂糖2杯 |
| 朝食 | 日曜日 | 8:00 | トースト、ジャム、紅茶(砂糖2杯) | ジャム、砂糖2杯 |
| 午前 | 日曜日 | 10:30 | チョコレートバー | 高糖質 |
| 昼食 | 日曜日 | 12:30 | サンドイッチ、フルーツジュース | ジュースに砂糖含む |
| 午後 | 日曜日 | 15:00 | コーラ(缶) | 高糖質 |
| 夕食 | 日曜日 | 18:30 | カレーライス、ヨーグルト | ヨーグルトに砂糖含む |
| 朝食前 | 月曜日 | 7:45 | コーヒー(砂糖1杯) | 砂糖1杯 |
| 朝食 | 月曜日 | 8:15 | シリアル、牛乳、オレンジジュース | ジュースに砂糖含む |
| 午前 | 月曜日 | 11:00 | クッキー | 高糖質 |
| 昼食 | 月曜日 | 13:00 | パスタ、サラダ、アイスティー(砂糖入り) | 砂糖入りアイスティー |
| 午後 | 月曜日 | 16:00 | チョコレートバー | 高糖質 |
| 夕食 | 月曜日 | 19:00 | 焼き魚、ご飯、みそ汁 | 砂糖なし |
| 朝食前 | 火曜日 | 7:30 | 紅茶(砂糖2杯) | 砂糖2杯 |
| 朝食 | 火曜日 | 8:00 | トースト、はちみつ、紅茶(砂糖2杯) | はちみつ、砂糖2杯 |
| 午前 | 火曜日 | 10:30 | コーラ(缶) | 高糖質 |
| 昼食 | 火曜日 | 12:30 | ハンバーガー、ポテト、炭酸飲料 | 炭酸飲料に砂糖含む |
| 午後 | 火曜日 | 15:30 | チョコレートバー | 高糖質 |
| 夕食 | 火曜日 | 18:30 | 野菜炒め、ご飯、スープ | 砂糖なし |
これは海外の患者さんの一例で、実は前回コラムでレントゲン写真が出ていた方の食事記録です。高頻度に砂糖を含んだ食品を摂取していることがわかります。
この記録を記入する際に患者さんが実際を記入しない場合も考えられますが(歯医者に小言を言われる事を避けて)、すでにそれが齲蝕予防のため避けるべき食事であることを自覚させることができます(こういうスパルタな感じが海外ですね)。
以上のことから高頻度の砂糖の摂取が、虫歯のリスクであると言えます。
なるべく時間を決めて食事をしましょう!
出典:Advanced Operative Dentistry Chapter 1 Management of dental caries
ステファンカーブの図:日本歯科医師会HP