虫歯のリスクその1
- 2025年1月27日
- 臨床系
こちらのコラム、気づけば約一年程更新しておりませんでした。。。(お読みいただいている方がいるかも怪しいですが)当院も開院一年が経過し、多くの患者様に来院していただいております。この場を借りまして御礼申し上げます。
タイトルの件ですが、虫歯のリスクは大きく分けて、①歯の表面性状(歯がつるつる曲面になっているか)、②糖基質(ショ糖等の接種)、③バイオフィルム(お口の中の細菌)、④時間
以上の4つの項目が影響しているとされております。本日はこのうち①、歯の表面性状について簡単にお話できればと思います。
歯の表面性状が悪い、これは歯の表面が凸凹していることを意味します。ミクロでは歯表面の脱灰(溶ける)で表面に凹凸ができます。またマクロでは修復手技が適切でないことに起因し、修復物の出っ張りはプラーク(食べかす)を停滞させ、不適切な隣接面コンタクト(歯と歯の間の接触強さ)は食片圧入をおこし、また不十分な接着修復は微小漏洩(修復物と歯質の間から細菌が侵入すること)を引き起こします。
多くの虫歯は修復物のすぐ隣に形成されます。これを
caries adjacent restoration (CAR)
と呼びます。つまり不適切な修復物では虫歯のリスクは減少しないばかりか、新たな虫歯のリスクにもなることを意味します。
ここまで書くと歯科医である自分の首を絞めていることに気づきます。(笑)
よって我々歯科医は修復処置において、良い適合性を目指す必要があります。しかし修復物適合性は我々歯科医だけの要因ではなく、修復物を作成してくださる歯科技工士さん側の要因も多分にあります。
患者様に保険と自費の修復物の違いは?とよく聞かれますが、最大の違いは適合性であると言えます。自費の方が、技工士さんの修復物1個あたりの制作時間が長い分(時間的余裕がある)、適合性が良いのは当然であり、これが虫歯リスク低減にもつながっているのです。(もちろん保険が過度に悪いと言うつもりはありません。優秀な技工士さんは保険も上手です。)
また虫歯リスクはこれだけで防げるわけではありません(前述の他3つの要因があります)。今回は修復物の適合性という観点を皆様と共有させていただき、修復物選択の基準となれば幸いです。
出典:Advanced Operative Dentistry: A Practical Approach : David Ricketts BDS Hons MSc Dist PhD FDS RCS ; p1~15, chapter 1